美しいPP701は意味のある無駄の無いデザインからできた椅子
タイトルがちょっと長くなってしまいました。
もう6月。はやいはやいっ^^;
関東は梅雨入り。東海地方はいつになるのかな。
さて、今回紹介するのは、PP701チェアです。
紹介といいつつ、分析好きの考察が入ってしまう商品紹介ブログですが、
よかったら読んでください。
自宅のダイニングチェアを探していたウェグナーが、なかなかイメージ通りのものに出会えず、
巡り合えないのであれば自らデザインしようと、考えたのがこのPP701です。
そして、デザインするにあたりイメージしたのはこの椅子を使う、住まい手である自身の奥様。
こんなエピソードがあります。
ある会話の中でウェグナーに、デザインした椅子の中で一番好きなものはどれかと質問したところ、
先に、隣に座っていた奥様に好きな椅子はどれかと聞くと、「自分のためにデザインしてくれたPP701」と答え、
それを聞いたウェグナーは、「君が好きなら、私もPP701が一番気に入っている」と、言ったそうです。
仲良し夫婦の素敵なエピソードですよね~。
当初は自宅ダイニング用だけで考えられたものだったので、6脚のみしか製作されませんでしたが、
当時の工房ヨハネスハンセン社からの要望でのちに製品化されました。
(現在の製作はPPmobler社)
ウェグナーには珍しく、スチール脚で軽快な印象を持つPP701。
自然に食卓に腕が伸びるようにと、背もたれから伸びるアームはテーブルと同じ高さに設計されており、
機能的にテーブルに納まるということではなく、肘かけとしての役割に重きを置かれたデザインになっています。
ただその、納まりきらないキレイな出っ張りが、テーブルセットにした時の美しさをもたらしてくれています。
そして、この椅子で一番目を引く特徴的な背もたれの十字のデザイン。
これには大きな意味があって、木の椅子を製作するにあたり大切な工程の1つに「木取り」という作業があります。
大きな半円を描くこのPP701のアームを、製材された1枚の板から継ぎ目なく取ろうとするのはとても大変な事で、
端から端まで節もなくキレイなものを取ろうと思うと、どれだけの木を無駄にしてしまうのか?ということになってしまいます。
4つの無垢材をつなぎ合わせた作り方をすることで、木材の無駄を少しでも減らし、「曲げ」ではなく、「削り出し」の方法を
取ることで、3次元的な形状が生まれ、それが座り心地へとつながっています。
さらに、4方向からの木のパーツが重なり、集まる部分に、あえて違う種類の木を使い、木目がズレる視覚的効果を解消し、
中心にはチギリを入れ、接着の強化をしています。
「ただ入れただけ」ではない、意味のある無駄の無いデザインが、このPP701の美しさを際立たせているのだと思います。
そうやって、改めて考えてみると、このPP701が愛され続けるのは、形だけを追求したデザインではない
「意味のあるデザイン性」と、その中にある、誰かをイメージして作られたという「リアルさ」があるからなのではないか?
と感じました。
さらに、そのリアルさからくる「座り心地」があるからこそ、その場所が居心地よくなるんだろうなと考察しています。
家具好き、椅子好きにはたまらないデザインです。
生涯で500脚以上もデザインした、ハンス・J・ウェグナーが1番に選んだ椅子。
座る価値ありです。