語り継ぎたい存在価値 Vol.6

語り継ぎたい存在価値。
今回、ご紹介いたしますのは、「The Chair・ザ チェア」。

101024_1.jpgHans J. Wegner(ハンス J ウェグナー)デザインの名作です。
ウェグナーの名作といわれるものは数多くありますが、
その中でも、プロポーションの美しさ、掛け心地の良さなど、
あらゆる点において最も完成度の高いチェアです。

101024_2.jpgまさに、椅子の中の椅子。
ウェグナーの代表作といえる一脚のお話です。


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1950年、この作品はコペンハーゲンで行われた「DEN PERMANENTE」とい展示会で、
当初ウェグナーの作品を数多く製作していた家具メーカーのヨハネスハンセン社から発表された。
展示会用に4脚製作され、ダイニングセットとしてディスプレイされた。
しかし、この椅子は当時としてはあまりにシンプルだったため、
アンデルセン童話の「みにくいアヒルの子」のようだといわれ、その4台すら売れなかった。
ヨハネスハンセン社も、この作品の販売に弱音を吐くほどであった。

しかし一人のアメリカ人が、誰もが見向きもしなかったこの椅子に注目していたようだ。
フェア終了後、アメリカから300台もの注文が入った。
当時この椅子は1つ1つが職人による手作りだったため、とてもその大量の依頼をうけられず、
残念ながら断ることになってしまった。

101024_5.jpg10年後の1960年、アメリカのCNNテレビで大統領候補ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンが
この椅子に腰掛けテレビ討論を行い、アメリカをはじめ世界中の注目を集めることになった。
当初「Round Chair」という名前がついていたこの椅子は、「The Chair」という愛称で呼ばれるようになり、
世界中で愛される椅子となっていった。

101024_6a.jpgこの作品の初期の物は、背の部分に籐が巻かれている。
そこにあるフィンガージョイントをウェグナー自身がみっともないと思い、隠していたのである。
当時、木と木の接合部分は見えないようにすることが一般的だった。
その後、フィンガージョイント部分の美しさは再認識され、今ではこの椅子の重要な特徴のひとつになった。



現在、この 「The Chair・ザ チェア」 を制作するのは、「PPモブラー社」。
職人の魂を大切に守り続けてきた家具工房。
熟練の職人技だけでなく、素材である「木」と向き合うことが徹底して重んじられている。

この「The Chair・ザ チェア」。
11月にBo STYLEでもご覧いただけます。
また、入荷のご案内もいたします。
ぜひ、ご自身の目で、感覚で、感じてください。
お楽しみに。

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