THE SPANISH CHAIR
スパニッシュチェアは、ボーエ・モーエンセンが自邸で使う為にデザインした椅子です。それだけに機能性は勿論、
その座り心地は抜群。モーエンセンの後期の作品で、最高傑作の一つと言えるでしょう。
デザインの元となっているのは、アンダルシアから北インド地方に伝わる一枚皮革で出来た伝統的な様式の木製椅子
(古代イスラム文化の影響を受けた地域でよく見られる伝統的な椅子)です。
伝統的かつ緻密な彫刻を取り去り、装飾性を最低限に抑え、モーエンセンが独自の解釈で、リ・デザインしたものと言われおり、
この椅子がスペインの貴族階級で使われていたところからインスピレーションを受けたため、
「Spanish Chair」と名付けられました。
この椅子の特徴の1つが、大胆に使われた一枚ものの大きな革皮の背もたれと座面です。たわみ具合が抜群によく、
快適な座り心地を与えてくれます。
ただ、時間が経ってくると皮革というものはどうしても伸びてきてしまうのですが、そこもしっかりと考えられていて、
座面と背もたれの裏側にベルトを取り付け、これを締める事で皮革の張りを取り戻す事が出来るようになっています。
長く愛される為の工夫とデザインが兼ね備えられているこのベルトは、背後から眺めた時にも、ひと際存在感を放ちます。
そして、この大きな一枚ものの皮革を使うということには、実は、もう一つの大きな意味がありました。
このチェアがデザインされた1950年代後半というのは、産業の工業化と発達により、車が普及していく中で、
馬具職人たちの仕事がどんどんとなくなっていたのです。
そんな時代の流れの中、一枚皮革を贅沢に使ったこのスパニッシュチェアのデザインによって馬具職人たちに仕事を与え、
救済する事も担っていたのです。
FDBを経て、「庶民でも手が届く価格で、質の良い椅子を作る」という信念を持ち、常に庶民に寄り添ったものづくりをしてきた、
モーエンセンらしさが表れたエピソードです。
そして、もう一つの特徴は、幅広いアームです。
かなり広く作られているため、サイドテーブル代わりにも使用でき、コーヒーカップや、文庫本程度の本、タブレットくらいなら、
このアームに置いて作業出来てしまいます。
装飾を無くし、必要とする機能美からくるシンプルなデザインが、モーエンセンらしさを象徴しており、発表当初から変わらず、
北欧を代表する家具ブランドであるFredericia社で長く愛される椅子として今も作り続けられています。
シンプルなデザインと低めの座面は、日本の家にも取り入れやすく、和室やリビング、テラスなど、
様々な場所でゆったりと楽しんでいただけると思います。
北欧を代表するボーエ・モーエンセンのデザインに触れて、北欧を感じてください。