語り継ぎたい存在価値 Vol.15

語り継ぎたい存在価値。
今回は、フラッグ ハリヤードチェア(The Flag Halyard Chair)についての物語を、ご紹介いたします。

120424_1.jpgある日ウェグナーは家族にせがまれてビーチへ行った。
忙しかった彼は、ビーチに行くことは時間の無駄だと考えていたが、しぶしぶと出掛けて行った。
やはり、ビーチで退屈し、とうとう砂遊びを始めてしまった。
砂を掘りながら、出来上がっていく型に自分の体を寝かせてみると、なんとも心地良かった。
あまりにも、座り心地がよかったので、彼は急いでメジャーを取りに家に帰った。
砂で型取ったこの椅子のサイズを細かく測り、図面を起こした。
これがフラッグ ハリヤードチェア(The Flag Halyard Chair)の誕生です。

1950年に発表、スチールで造られたウェグナーのイージーチェアは注目を集めた。
これまでウェグナーは、木製チェアをメインに造っていたからだ。
スチールを使った彼の椅子は新しい発想だった。
彼はパイプを使ってフレームを造り、旗のロープをそこに編んだ。
これは彼の得意とする木製チェアにも使われている技術だった。

当時のデンマークでスチール製品を生産するには、スウェーデンかドイツの工場に発注をかけるのが普通だった。
しかし、大量生産でないと工場に発注することは割にあわなかった。
このチェアの大量生産は考えていなかった。

当時、ウェグナーはコペンハーゲンに設計事務所を構えていた。
その窓からは自転車屋が見えた。
当時の自転車は手作りで、一つ一つ職人さんが造っていた。
だから当時の自転車はオーダーメイドがほとんどだった。
それを利用して、彼はこのチェアのフレームを自転車屋に頼んだ。

塗装についても、50年代の品質はスプレーペイントより、はけで塗っていくハンドペイントの方が
クオリティーが高く、当時造られたフラッグハリヤードもハンドペイントだった。
今でも、中古のフラッグハリヤードで、ハンドペイントのものを探す事が出来たら、
当時の生産であることが証明できるだろう。

120424_2.jpg復刻版が生産された現在、フラッグハリヤードは近代的手法で造られているが、
ロープ張りは職人の手で造られている。


私が、初めてフラッグハリヤードの実物を見たのは、東京のスカンジナビアンリビングのショールームでした。
当初、カタログでしか見たことのないチェアもありましたが、たくさんのチェアを見て、触れて、感激したのを覚えています。
その後、デンマークのPPモブラー社で、ロープを張っているところを実際に見せていただきました。
長い長いロープを1本ずつ手繰り寄せながら、力を込めて、ロープを張っていました。

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色々な事をお客様にお伝えしたいと思います。

語り継ぎたい存在価値でした。