語り継ぎたい存在価値 Vol.3

今回は、ボーエ・モーエンセン(Borge Mogensen)のJ39誕生ものがたり。

100619_4.jpgある日、コペンハーゲンにあるFDB(デンマークの生協)の本社から、
チーフ家具デザイナーだったボーエ・モーエンセンに1本の電話が入った。
その内容は、庶民のための椅子を作って欲しい、という依頼だった。
デザインは彼に任すものの、条件がいくつか提示された。
ひとつは、工場が最近購入したばかりの、木の回転加工機を使用すること。
そしてもうひとつは、国内で調達可能な木材(オークとビーチ)を使うことだった。
そうすることで生産コストを抑えようとしたのだ。
もともとFDBはスティックバックのソファーやチェアの生産を得意としていた。

当時は、戦後だったため、人々は職を求めて地方から
首都であるコペンハーゲンに集まってきていた。
これにより、都市の住宅事情は厳しくなり、
家具のサイズも限定される、という背景もあった。
そして、生協の基本姿勢である庶民の為の製品であるということから、
価格を抑えた家具が求められた。

この依頼に応じ、モーエンセンは早速設計をはじめた。
製作コストを抑える為に、彼はこの椅子のパーツを4つに絞った。
脚、背(無垢の曲木)、座面、そして脚の間にまたがるスティックバーである。

FDBの工場はタームという地方都市に在ったが、
労働力がコペンハーゲンに流れてしまった為、
人の手をあまりかけずに生産できる機械加工でパーツを生産した。
ただし座面はペーパーコード(紙紐)から出来ているため、人手がかかってしまう。
これを町の手の空いた人達に呼びかけて、歩合制でこの作業をやってもらった。
その中には郵便屋さんや、漁師、農家の人などがいた。
ただ、一番難しい曲げ木の背部は、工場の職人に任せられた。
1947年、このようにして出来上がった椅子がJ39である。

100619_2.jpgモーエンセンならではの簡素で誠実なデザイン。
彼の人となりが表れた、やさしく温かみのある表情をしている。
J39は、そのインテリア空間もやさしく柔らかな雰囲気にしてくれます。

100619_5.jpgBo STYLEには、ボーエ・モーエンセンのデザインした革の椅子やソファを展示しています。
ぜひ、実際にモーエンセンのデザインを見にいらしてください。